ホーム > コラム 今、ホームページに求められることは~CMS導入は目的ではなく手段~
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グローバルデザイン株式会社
代表取締役 白旗保則
現在、様々な公共団体にCMS導入やサイト再構築のお手伝いをさせていただいている中でとても気になることがある。それは何かというと「目的を見失っているのではないか」という懸念である。
例えば、アクセシビリティを向上させようとCMSを導入するケースでは、CMSの機能にはとことんこだわるものの、コンテンツそのものへのこだわりやサイト構成へのこだわり、そして肝心のアクセシビリティに準拠した既存ページの移行ですらこだわっていない要求仕様書を数多く見かける。
まるでCMS導入が目的で、CMSを導入すれば「魔法の玉手箱」のようにすべてを解決出来ると幻想に陥っているように思える。
もちろん、CMSを導入することで一定レベルのアクセシビリティの向上は可能である。ただし、本当にそれだけでいいのだろうか。また、アクセシビリティを向上すれば、広報・広聴としてのホームページの役割はすべて網羅できるのだろうか。
改めて、公共団体がホームページを開設している意味を確認していただきたい。
ホームページに情報を掲載する目的はここにある。しかし、普段訪れる機会が決して多くない住民に対して、単に情報を羅列するだけで良いのだろうか。最近では分野別の情報分類に加え、ライフイベント別や組織別など複数の入り口を設けるサイトが増えてきた。これは大変良い傾向であるが、本当にこれだけで足りるのであろうか。
例えば、ECサイトに見られるようなレコメンデーション(利用者の好みを分析し、各利用者ごとに興味のありそうな情報を選択して表示すること)、あるいは、ECサイトのみならずコーポレートサイトやコミュニティサイトなどにも求められているコンバージョン(ホームページ上から獲得できる最終成果)などは必要ないだろうか。
確かにホームページは住民が情報を求めてやってくる。しかし、その際に住民の求める情報のみ提供するのではなく、そこから公共団体側から伝えなければならない情報を提供する、あるいは、ホームページを通じて公共団体側の目的を果たすこともできるのではないか。本来の広報ツールとしてのホームページの役割を改めて見直すことも必要なのではないだろうか。
最近は、問い合わせに加えよくある質問やパブリックコメントなど広聴分野でのホームページ活用も増えてきたように思う。今までのマスメディア(テレビ、新聞、印刷物)とウェブの大きな違いは双方向性にある。このウェブの特性を活かさない手はない。CMSに搭載されている機能の利用から本格的なCRM製品の導入までシステムを導入してできることは数多くある。また、システムに頼らなくても運用でも十分できる広聴機能もあるだろう。広報が充実し始めた今、改めて広聴分野でのホームページの活用を検討する時期に来ているのではないだろうか。
これは「担当部署が違うので難しい」だろうと感じつつも一言。現在、公共サイトでは様々な電子行政サービスが提供されている。しかし、中には提供されているにも関わらずユーザビリティやアクセシビリティの良くないサイトが散見される。広報の担当するサイトは良いのに電子行政サービスサイトに移動すると悪くなってしまう。確かに「担当部署が違うので難しい」というのも良く分かる。しかし住民から見た場合は、同じ団体の提供するサービスのひとつである。電子行政サービスがひとつでも多くの分野で提供され、利便性が向上するのは歓迎だが、できればユーザビリティ・アクセシビリティに関しても同レベルでの開発・運用をお願いしたいと思う。
今後、住民にとっては利用頻度の増えるホームページ。この便利で新しいメディア(媒体)を公共団体としていかに活かせるのかがポイントになると思われる。また活かせる分野も広報・広聴、観光から教育、農林水産、商工業まで広がり始めている。今後の各公共団体の活躍に期待したい。
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